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…わたくしはお父様の着せかえ人形ではありません!!」
エルナの公爵に対する初めての反抗だった。
「そう…だな。君の人生は君のものだ。やりたいようにやればいい。行きたいところへ行けばいい。しかし因果とは不思議なものだ。君にはやはり皇帝の血が流れているよ」
落ち着いた表情で、少し笑みを浮かべながらそう言った。
「もちろん知っているだろうが、君は皇帝の実の娘だ。民主化に伴って退位され、直接の家系を断じると仰せになり子供たちを養子に出した。君もその一人だ。それ以来、養子になった子らは皇帝とは何の関係もなく育っている。それでも君のように戦いに行きたがる子がいるそうだ」
「お父様、どういうことでしょうか?」
エルナには少し分かりかねていた
「皇帝家の一族は代々、軍人として戦争が起こると自ら前線に立って戦っていた戦士の一族なんだ。そして君も戦場に立とうとしている。やはり君も皇帝の娘ということなんだな」
公爵は少し悲しそうな目でエルナを見つめていた。
前の戦争が起きる直前に得た妻との幸せな日々。
その日々は長く続かなかった。
戦争末期に偶然、飛行場へ妻が来ていた日に旧オムスク王国軍の爆撃があり、それに彼女は巻き込まれ亡くなっていた。
一人で生きてきた時間の長かった彼が再び得た家族。それがエルナだった。
そのエルナも戦争によって引き離されようとしている。
それが彼にとって自分が死ぬより辛い事だったのかもしれない。
それを彼はやっと踏み越えたのだった
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