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4日後、屋敷に手紙が届いた。
中身は入隊に関する書類。集合場所などについて事細かに書かれていた。
「…お父様、そして皇帝陛下。ご覧になっていてください。必ずわたくしは戦い抜きます」
書類を読み終えたエルナは窓に向かってそう言った。
窓の先にはクッテンブルクがあり、そこには父がいる。
そこまで気持ちは届いているだろう。
そう思うと、出発前、最後になるかもしれないラジオの音楽番組を聞こうとスイッチを入れた。
しかし、そこから流れてくるのは音楽ではなかった
『…先ほど、陸軍将兵の敢闘虚しくクッテンブルクが陥落。守備隊は…全滅し、前大戦の英雄ゲルハルト フォン バイヤー少将も壮絶なる戦死を遂げられました。
繰り返します。先ほど、クッテンブルクが…』
エルナは絶句した。
また会おう。そう言って別れた父はもういない。
余りに辛い現実が彼女に突きつけられた。
エルナは思いの丈を込めて泣いた。
その声に慌てた執事が部屋に入ってきてもお構いなしに泣き叫んだ。
やがて、涙も枯れ果てると彼女は短剣を持って立ち上がった
エルナは短剣を鞘から抜いた。
そこからは銀色に輝く刃が現れた。
そこには公爵、そして皇帝の名が刻まれていた。
2人の父の思いの刻まれた短剣。
それを手に彼女は改めて戦う決意をした
「…お父様、そして皇帝陛下。ご覧になっていてください。必ずわたくしは戦い抜きます」
もう一度、先ほどの言葉を口にして
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