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フォッケの部屋を出た2人は司令部を出て滑走路の方へ向かった。
滑走路からは次々と戦闘機が訓練のために飛び上がっている。
その中を第3飛行隊 第8中隊の格納庫へと歩いていった。
格納庫の中は分解整備中の機体が10機ほど並んでいて、まわりで整備兵たちが慌ただしく駆け回っている。
戦闘準備が整う間もなく敵に攻め込まれたテューリンゲンは、多くの工場が戦時の量産体制が整う間もなく戦わざるを得なくなった。
そのため、稼働機が足りていない空軍では飛んでいない機体は細かく整備して稼働率を向上させようとしていた。
戦況は逼迫している。
「第1小隊集合!」
バウマンがそう怒鳴ると、パイロットスーツ姿の2人が走ってきた。
一人は大柄な男、そしてもう一人は黒髪の小柄な女性…東洋人だった。
「貴様等に新入りを紹介する。エルナ フォン バイヤー少尉候補生だ。明日から俺の小隊に配属される。彼女はあのゲルハルト フォン バイヤー大将の養女だ。そのため、航空機操縦経験が2年ある。後輩をしごけると思った奴は心のそこから後悔するといい」
バウマンはバツの悪そうな顔をしている男の方を見ながら言った。
「バイヤー、紹介しよう。こっちのデカいのがクルト ハンセン少尉候補生。体もだが態度もデカい。多分苦労するだろうから気を付けておけ」
バウマンがそう言うと、ハンセンと呼ばれた男はすかさず反論に出た
「大尉、初対面の相手にそんな紹介ですかい。長所を言うとか無いんですか?」
「あ~、はいはい、ちょこっとだけ手先が器用だからそこは頼りになるかもしれないな」
反論を受けたバウマンはずいぶんと面倒そうに付け加えた。
このやり取りを見る分にはハンセンはずいぶんとバウマンにいじられているようである。
「それともう一人。ミキ サカイ少尉候補生。分かると思うがサカイは東洋人、扶桑の生まれだ。どっかのバカより頼りになるからよく聞いておくといい」
サカイはハンセンに少し申し訳なさそうな顔をしながら頭を下げる。
そのサカイをエルナは珍しそうに見ていた。
最近では東洋人が移住する事も増えたが、軍にいるのを知ったのは初めてだからだった。
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