終わる平和

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2年前 1934年秋 テューリンゲン南部エヒテルンの大空に1機の複葉機が舞っていた。 2人乗りのその機体の後部座席には髭をたくわえた初老の男が乗っている。 しかし彼が操縦桿を握っているようではない。 前部座席に目をやると、1人の女性…いや少女と呼ぶべきだろう、まだ幼さの残る少女が操縦桿を握り自分ともう1人の命を預かり飛んでいるではないか。 飛行機を飛ばせる女性がいないわけではないが、彼女はその中でも特に若い。 少なくとも、この国では最年少のパイロットだろう。 その少女が操る機体はまるで命ある鳥のように空を舞い、そしてゆっくりと地上へと降り立った。
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