終わる平和

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1936年、ユピトル大陸の東西にある大国レマン連合とオムスク社会主義共和国連邦の戦争がついに中立だったテューリンゲンにも波及した。 オムスク軍の進撃は速く、町々は次々と敵の手に落ちていった。 徴兵のほか、志願兵の募集年齢が引き下げられ、女性の志願も受け付けるようになった。 それでも怒涛の快進撃を続けるオムスク軍を止めるにはいたらなかった 1396年4月11日 エヒテルン郊外 バイヤー公爵邸 「…はい。はい。了解しました。明後日ですね?必ず向かいます。では…」 公爵がエルナと夕食を共にしている頃だった。 突然鳴った電話に出ると彼は神妙な表情で受け答えた。 いつもの仕事の電話だろうか、そうエルナは思ったが、公爵の顔を見てすぐに違うと断じた。 ただならぬ事ではない何かが起ころうとしている。 うっすらとそんな気はしていた。 「エルナ、私は明後日クッテンベルクへ行かなければならなくなった。当分は帰ってこられなくなるだろう。今、第4管区防空司令部司令官に着任するよう命令が下った。私のような予備役も使わねばならぬほどに戦況は悪化しているらしい」 そう言うと彼は椅子に座り直し、食事を続けた。 クッテンベルク…。 エヒテルンからは300km程離れた国境近くにある共和国第2の都市。 一度行けば気軽に会いに行くことは出来ない距離である 戦争とは久しく離れていたはずのバイヤー家にもついにその暗闇が押し寄せてきていた
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