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「ごろにゃ~ご♪」
木漏れ日の降り注ぐアスファルトの上で、猫川奈緒が栗永モモにグリグリとまとわりついた。
猫川奈緒は一学期の終わりのあの闘い以来、かろうじて精神の崩壊は免れたが、いくぶん人格に変調をきたし、モモと一緒にいる時はたいていモモの飼われ猫になったと思い込んで生きているらしい。
敗北によりモモにすっかり頭が上がらなくなり、頭が上がらないのならいっそのことペットになってしまうほうが楽だと本能的に判断したのかもしれない。
とにかく奈緒はモモのペット化し、時々自分より小さなご主人に甘えて、かわいらしくじゃれつくのだ。
モモもすっかり飼い主気取りだ。
「んもう、奈緒ったら、かわいいんだから! よしよし♪ チュウもしちゃおう♪」
「ふにゃぁご! ごろごろごろ!」
モモが爪先立ちになって、頭一つ分背丈の大きい奈緒のほっぺにぶちゅうっとキスをして、奈緒が喜悦の声を上げた一幕だ。
こんなふうに、衆人の視線などに全く憚らずしょっちゅうじゃれ合っている。
こんなにかわいがってもらえるのなら、俺もモモのペットに就任させてほしい。
あるいは、今となってはもう遅いが、俺が一時期世界を統治していた頃に奈緒を強引にペットにしてしまうのでもよかったな。
世界が俺のものだった記憶は俺とモモと奈緒の三人にだけは何故か残っているのだから、いったんペットにしてしまっていれば、その延長線上で、奈緒は今でも俺にみゃうみゃうまとわりついていたことだろう。
などと考えながら、俺は付録のように美少女二名に付き従っている。
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