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「有り得ない」
その言葉は胃と一緒に押し潰され、鷲づかみされた内臓のように液状になって脳を何かに染めてゆく。
プレッシャー。
今までに無い強力な圧力。目に見えない壁が迫ってくるようだ。
血管が浮き立つ。オレは腰を落とし構える。やらねば殺される。
膝を立て踏ん張るバゲルフの前脚は血管が浮き出ていて、苦しみに顔を歪める隙間から唾液が地面へと溢れ出ていた。
オレは剣の柄を握り直す。バゲルフの口が開いた。視線が重なる。
剣を振り抜いた。感触はなかった。空を切り、腐臭の隙間からブエノスの朝の風が僅かに頬に届く。
目の前にバゲルフの姿はなかった。
剣が届く前に力尽き、バゲルフは地面に横たわっていた。
意識を失い生気はない。閉まりきらない瞼から白目が見え、唾液と微量の吐瀉物が口から溢れていた。
もう立ち上がる事はないだろう。
オレは剣をバゲルフの首筋に振り落とし絶命させた。
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