その手には大剣を

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 ここは栄国アルカディアの南端。ブエノス。  栄国アルカディアとは、南北に続く大陸の中央に位置し、大陸一の国家だ。  ブエノスとは、栄国アルカディア南部国境地域及び、国境先の砂漠を指す地域であり、ここブエノスで周囲を臨めば、見渡す限りの砂漠が広がっている。  かつて、明確な国境線は無かった。しかし、今では砂漠の土地に聳[そび]える巨大な壁がある。この壁は、栄国アルカディアの領土と軍事力の象徴みたいなものだ。国外からの外敵を阻み、領土を誇示する。  アルカディア政府及びアルカディア軍が有する第三の城壁。高さ二十メートルはあろうその壁は、現在も建設中であり、西から造り始めた壁は東へと緩い弧を描きながら今でも建造を続けている。  セメントに似た灰色の半液状の泥をパテで整え、塗り固められた壁は、太陽の光を跳ね返し、数百メートル置きに壁の頂上部に設置された四角い箱状の監視塔から顔を出す兵士の甲冑へと当たり、遠くからでも反射する光が確認出来る。  甲冑に反射した光に目を細めた。太陽はぐいぐいと気温を上げ、肉体に渇きを齎[もたら]す。  オレは、やっと第三の壁の主要な地域に設けられたゲートと呼ばれる巨大な鉄扉が見える所までやって来た。
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