その手には大剣を

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 しんと風が止んでいる。砂漠の砂も目を閉じているかのように闇の中で息を潜めている。  夜の終わりが地平線の向こうで見え始めた。湿り気を帯びた風が足下の底の方に流れ始め、砂が緩やかに目を覚ましてゆく。  そろそろヤバくなってきたな。  周囲を見回すが一向に姿を見せない。臭いもない。  腰ベルトに付けた布の財布に触ると硬い硬貨の感触が少しだけがする。溜息が出た。 「何でも屋」「カウボーイ」憧れの自由業と呼ばれていた時代は既に過去の物になってしまった。  決められた職に就くこともなく、好きな時間に起きて、好きな時に食べ、やりたい依頼をこなす。昔はそれで良かった。大抵の依頼を終えればそれで1ヶ月くらいは楽に暮らせたのだから。  これも時代なのかも知れない。  平和になったお陰で臨時のVIP護衛、討伐、遠征軍の傭兵の依頼が一気に減り、それを皮切りに他の依頼の単価も随分下がってしまった。今では1週間過ごすのがやっとだ。  仕方ない。それもまた自由業。  オレはそう割り切って一歩踏み出した。
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