その手には大剣を

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 「猛獣討伐依頼」  政府公認の依頼書で、成功報酬の支払いが確実と言うメリットがるが報酬額が他と比べるとやや少ない。  まあ、報酬額が少ないのは仕方の無いことない事か。  そもそも猛獣討伐など過去の言葉だ。既に今追っている獣は猛獣指定されてはいるが乱獲が進んで、隣国では希少種の指定されているものだ。  同時に生息圏を縮められ、今じゃ壁の方まで近付きやしない。  実質政府としては、食肉の調達と自由業でやっている奴らの雇用対策なのだろう。事実ここ十数年、この街の近郊でバゲルフ・ウルフの被害報告は上がっていない。  まあ、あんまり依頼がなさ過ぎると過去の大戦で活躍した元傭兵やらハンターが国外に流出して、いつの間にか敵として出会うなんて事に政府もしたくないのだろうしな。   その為の大義名分。  この砂漠に壁が出来て、この砂漠全てを壁で隔てようともきっと何も変わらないだろう。そう言う国だ。  そのバゲルフとは体長十から十五メートルになる巨大な狼の一種で、過去の報告書には二〇メートルと言う記録もあった。  灰色の毛並み、シェパードを飢えさせたような顔つきに長い尾、性格は荒く、奥歯に溶解液を分泌する構造があり牙で引き裂かれなかった場合でも、舌の奥に溜まった溶解液で身体ごと溶かして行く。夜行性で、繁殖時期以外は基本単体で行動している。
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