その手には大剣を

5/9
前へ
/294ページ
次へ
 陽が昇る反対側、闇に紛れて移動する一頭のバゲルフ。  少し距離があるが、追いつけない程じゃない。脚に力を溜め、一気に蹴りだす。  蹴り出した足後ろが大きく砂を舞い上げ、踏み潰された砂の粒が音を立てた。  地面が鳴る。速度を上げるごとに音は大きくなった。    バゲルフも足音に気付いたのか首先を向け、立ち止まる。  眼が良い。敵を発見したとばかりに体中の毛羽立たせ、頭を低く構えた。  約三十メートル。  ここまもうバゲルフの間合い。頭を低くし硬い頭部で飛び込んで来るオレを跳ね飛ばすつもりだ。  距離がどんどん縮まってゆく。距離が近くなるにつれ、バゲルフの大きさを感じる事が出来た。七か八、いや十メートル級のバゲルフだ。前脚も、顎も、直撃を浴びればただでは済まないだろう大きさ。  自分の鼓動が早くなってゆくのが分かる。  まだ、もっと距離を詰め、オレの間合いに……  近い。奴も動こうとしない。打って出るつもりはないらしい。ギリギリまで引き付けて最大限の力をぶつけてくるつもりだ。  奴の眼が光る。バゲルフは更に頭を下げる。眼光が直線上に並びそして鼻先を地面に擦った。
/294ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加