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陽が昇る反対側、闇に紛れて移動する一頭のバゲルフ。
少し距離があるが、追いつけない程じゃない。脚に力を溜め、一気に蹴りだす。
蹴り出した足後ろが大きく砂を舞い上げ、踏み潰された砂の粒が音を立てた。
地面が鳴る。速度を上げるごとに音は大きくなった。
バゲルフも足音に気付いたのか首先を向け、立ち止まる。
眼が良い。敵を発見したとばかりに体中の毛羽立たせ、頭を低く構えた。
約三十メートル。
ここまもうバゲルフの間合い。頭を低くし硬い頭部で飛び込んで来るオレを跳ね飛ばすつもりだ。
距離がどんどん縮まってゆく。距離が近くなるにつれ、バゲルフの大きさを感じる事が出来た。七か八、いや十メートル級のバゲルフだ。前脚も、顎も、直撃を浴びればただでは済まないだろう大きさ。
自分の鼓動が早くなってゆくのが分かる。
まだ、もっと距離を詰め、オレの間合いに……
近い。奴も動こうとしない。打って出るつもりはないらしい。ギリギリまで引き付けて最大限の力をぶつけてくるつもりだ。
奴の眼が光る。バゲルフは更に頭を下げる。眼光が直線上に並びそして鼻先を地面に擦った。
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