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バゲルフの前足が膝を伸ばし、カウンターの姿勢。剣に構わず身体をぶつけてくるつもりだ。
バゲルフの頭が飛んでくる。オレは斜め前へ前転をするように転がる。バゲルフの頭がオレの直ぐ隣を通り抜けて行く。
廻転しながら、バゲルフの胴体を捉えた。剣を握り込み、足首に力を入れ身体を制御。回転が止まり、目の前にはバゲルフのあばら骨を浮き立たせ、中で膨張する肺と前脚の筋肉が見えた。
バゲルフが動き出す前に剣を振る。掬い上げるように伸びる剣が、バゲルフの下腹部からあばら骨の中央に向かって伸びた。岩を削ったかのような刃先の無い剣が、バゲルフの身体の奥へとめり込んでゆく。
分厚い皮膚の感触、そしてその奥に収まっている内臓が衝撃で緊張し筋肉が硬くなってゆくのが分かる。
同時にバゲルフは悲鳴とも雄叫びとも言えない声を上げた。
そして力が抜け、剣先にずっしりとバゲルフの体重がのし掛かってくるのが分かった。
オレはその場から一歩下がり、バゲルフが地面に倒れるのを見た。
確実にダメージを与えた。感触は確かなものだった。臓器の一つや二つは破壊したに違いない。後は苦しまないように意識を……
身体の緊張がほぐれ、自分の剣の重さを改めて体感する。
その瞬間、バゲルフが再び立ち上がるのを見た。
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