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『さみぃ……』
マフラーが冷たい風に
なびく朝。
俺は雪の吹雪く天気の中
停留所でバスを
待っていた。
名前は『榊』
高校2年の冬だ。
この時、俺は寝坊。
遅刻回避の為に
初めてこのバス停を
利用した。
『くそ…っ何でこんな寒い日に限って手袋忘れたんだ俺は……!!』
寒さで悴む手を
コートのポケットに
突っ込みながら
小さな後悔をする。
人の気配がない
このバス停。
朝だというのに…。
少し寂しいな。
…なんて、頭に過った言葉。
俺らしくねぇ。
そんな俺の耳に
……ふと
聞こえた足音。
長い栗色の髪。
長く白いマフラー。
綺麗な…
…………瞳。
呼吸を一瞬にして
奪われた。
視線を反らす事さえ
出来なかった。
俺はただ…
ただ、目の前の
小さな少女を
見つめていた。
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