電脳暗号

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――ゴゥ……ン! ミュージアム全体を撃ち揺るがせた振動の向こうから、細い光が放射され、ゆっくりとその幅を広げてゆく。 ……なるほど、ね。 俺は、今日何度目かの感嘆を洩らしつつ、首を傾けて目映い光に目を細めた。 〈博物館〉には、単なるコレクション・ルームとしての役割の他に、侵入者の目を欺き、ミスリードさせる為の防壁機能が与えられていたのだ。 メッサーシュミットの置かれた作業ピットの向こう側、コレクションラックの奥には巨大な隔壁が隠されていて、その扉が左右に押し広げられている。 格納庫独特の白色LEDが、強いオイルの香りと共に辺りを覆い尽くす。 ――ドォン! 広大なフロアーが、開け放たれた隔壁の向こう側に広がっている。 強い逆光の向こう、昨日帰還したばかりの輸送シャトルが、鯨のような巨躯を横たえていた。
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