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――Pi!
腹が減っていた。
目の前に広がるテーブルには、それこそ喰いきれない程の料理が並び、湯気を立てながら俺を待っている。
――!
一番近くの大皿に載ったチキンのローストは丸々と太り、繊細かつ豪快に焼かれた肌に、ジワリ。と脂を浮かせている。
パリッとした皮目の下で、切り分けられるのを待つ熱々の肉は、はち切れそうな程の肉汁を閉じ込めながら、実に旨そうな香りを振り撒いているじゃないか。
――Pi!
鼻をヒクつかせながら、丸々と膨れ上がった皮にナイフを入れ、弾けるように滴る肉汁に目を細める。
照りのある外側とはまったく質感を別にして、まるで蒸し上げたかのように柔らかな肉は、ホカホカと盛大な湯気を噴き出しながら、フォークの下でホロリ。とほどけた。
――!
絶妙の塩加減と火加減を予感させる仕上がりに、俺は思わず唸り声を挙げる。
腹に詰められた香草の、淡く上品な香り。
――Pi!
俺は、腹と同時に喉を鳴らしたのだった。
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