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「国後島で降ろして貰いたいとのことです。」
交渉に立ち会わなかった私に、ウイッツ副指令が簡潔に結果を告げる。
「基地まで行けば、IDの照会と登録が必要になるし、その途端にカネが必要になってくる。シベリア辺りじゃろくにサルベージできるもんもねぇだろうが、北限の内側なら、少なくともキメラに襲われる心配はねぇとさ。」
最後に姿を現したコバヤシ大尉は、ドアを閉めながら肩を落とした。
「まったく、近頃の難民は根性座ってるよ。」
ユーロ地区からの難民は、既に世代交代を重ねている筈だが、アジア系との共存を拒む傾向が強い。それに、近頃急激に厳しさを増した、都市企業の住民管理に対する不信と反発もあるのだろう。
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