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田村は気にするなと言って、川上を追いかけていった。
気にしているのは田村の方だった。
きっと川上の事が好きなのだ。
その場に残された杏樹と梶はしばらく無言のままだった。
梶の顔は依然として変わらず、喉まで出ている言葉をどう発しようと考えているようだった。
「なんか…ごめんなさい。」
杏樹はこれしか言葉が出なかった。
「ホントに昨日は送ってもらっただけで…。」
梶は少し笑った。
「こういうふうに話すの久しぶりだな。」
さっきの冷たい表情は梶から消えていた。
「昨日もあんまり話せてないしな。」
川上との“やり取り”がなかったように梶は話をふってきた。
杏樹は少し安心した。
「5年前だもんな。大人になったよなぁ。」
梶は5年前を思い出していた。
「かなり元気だったよな。
今とは全然違うよ。」
全然違う…
杏樹は卒業してからの4年間が頭を過った。
4年間、ずっと“芹沢亨”がいた。
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