バックパッカーとの遭遇

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パキスタン帰りの川田さんとしこたま飲んだ次の日は、昨日行った鳴砂山へ再度訪れることにした。しかし、昨日のように観光客の多い場所ではなく、自転車で一時間ほど砂漠沿いを走り、人気が無く砂漠を見渡せる場所に行った。 砂丘に登り、二人見渡す限りの荒野を見つめる。 言葉無く砂漠を見ていると川田さんが何やら黒い塊を出して細くしてからタバコに詰め始める。ハシシだ。 『別に無理に勧めないけど』と言い。わたしの口元にジョイントしたハシシを持ってきた。日本でガンジャは少し経験しているので、ハシシもやったことあるような感じで受け取り、深く吸引し、肺に貯める。数回吸うと顎がガクガクし、よだれが垂れそうだったので、格好わるいから横になった。砂漠の景色が鮮明に見え、太陽から音楽が聞こえるような気がし、感覚が砂漠と一体化していく。いい気分だ。日本で吸ったガンジャと全然違う。 わたしは川田さんに聞いた。 『これがホンマの自由ですよね?』 『金払って手に入れた自由だよ。本物の自由じゃ無いけど、日本じゃ幾ら金積んでも手に入んねぇ』 日本の枠組みの中で技術を生かす為に語学を修得しようとしていたわたしにとって根底が揺らぐ体験だった。
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