プロローグ

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「はぁ―――っはぁ、はぁ――っ」 夜の闇を、私は駆け抜けてゆく。 空には暗雲が立ち込め、ゴロゴロ・・・ゴロゴロ、と、雷鳴が響いていた。 「――はぁ、っはぁ、―っ」 やった。ついに、私はやり遂げたのだ。 脇に抱えるトートバッグの中には、確かにあの食物が入っている。これさえあれば――!! ドンッ! 「あっ」 走り疲れていた私は、前方不注意になっていたようだ。誰かにぶつかった。 「おいネェちゃん、どこ見て歩いてんだァ!?あァン!!」 目の前には、タコ頭の愚民が。見るからに、何かの第一話で倒されそうな顔である。 (・・・めんどくさい。5万ボルトくらいで気絶するかな?) 私が右手を振り上げた、その時。 「おい、そこで何やってんだ!」 どこからともなく、中年男性の声が。 「ちっ、またあの先公かよ。さすがに退学はゴメンだぜ」 タコは走り去った。どうやら、タコヤキにする必要性はなくなったようだ。少し残念である。 「キミ、大丈夫?ケガとかない?」 走り寄って来たのは、さっきよりも若い声をした少年だった。 「・・・ハ、ハイ」 「ん?あぁ、さっきのはコレ、ボイスレコーダー」 少年が変な黒い機械のボタンを押すと、 「おい、そこで何やってんだ!」 「――!!」 「ってね!面白いだろ?」 悪戯っぽい笑みを浮かべる少年。 ともあれ助けてもらったのだ。何かお礼をしなければ。 そういえば、おやつにとっておいたのしイカが、何枚か余っていたはずだ。 「助けてくれてありがとう。あの、これ良ければどうぞ」 そう言って、のしイカを差し出す。 「えっ!いいの、もらって?いやぁ助かった、夕食なくて困ってたんだよね!」 少年は、貪る様にのしイカを食べ始めた。
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