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少名もいなくなったので、再びアホ毛に向き合う。
やっぱ長いな。
「・・・よし、切るか」
近くにあったハサミを手に取り、勢い良く根元を切る――!
「パキィーン!ヒュンヒュンヒュン・・・カッ!」
・・・今のは、アホ毛が切れた音ではないな、うん。
音がした方を振り返ると、床にハサミの歯が突き刺さっていた。
家はフローリングだから、バレたらお小遣いを減らされるかもしれない。
(にしても・・・
ホントにこれはオレの毛なのか?
いや、いくらなんでも固すぎだろ。
んで、ハサミで切れないとなると・・・)
「ていっ、ていっ」
「ビヨン、ビヨン」
どうやら、引っこ抜くのも不可能らしい。
「どうすんだよ、コレ・・・明日から学校だぞ・・・」
いくらなんでも、これをつけたまま登校するのは恥ずかしいにもほどがある。
(そんなことをしてみろ?オレの青春はあっという間に沈黙の春だ・・・)
オレには、ため息をつくことしかできないのだった。
諦めてリビングに行き、ソファーに座りながらゲームをすることにした。現実が理解不能なので、架空世界に逃げることにしたのだ。向こうでは上位ハンターだからな!
少名はいない。どうやら、部活に行ったみたいだ。あいつは合唱部所属の中学三年生で、ソプラノを担当している。
せっかくの休日なのにご苦労さんなことだ、などと他人事に思いながら、オレはコントローラーを握った――
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