12人が本棚に入れています
本棚に追加
「――む?もうこんな時間か」
気付けば、窓から夕日が射し込んできていた。
「逆鱗は出なかったが・・・やむを得まい」
ゲームの電源を切り、夕食の準備をすることにした。
伊都家は四人家族だ。しかし、両親とも仕事で世界各地を回っているので、夕食は少名が作ってくれている。
だから、その準備と後片付けはオレの仕事、というワケだ。
オレは、よろよろと今日の料理に必要な食材のチェックを始める。
「・・・冷蔵庫に卵がないな」
少名は卵料理が大好きだ。前に一度買ってくるのを忘れたことがあったが、
「卵がないとヤダ!卵がないなら作ってあげないからっ!」
とヘソを曲げられ、真冬の夜中に買いに行かされたことがある。
あの日の気温は、異常気象でマイナス15℃くらいだったっけ。震えながらスーパーへ買いに行ったことを覚えている。
「仕方あるまい。んじゃ、ひとっ走り行ってきますか!」
オレは、勢い良く家の外へ飛び出していった――
――が、すぐに引き返してきた。
「あっぶねぇー!帽子、帽子!・・・と、あった!」
父親のものだと思われる青いハンチング帽を被り、再び家を出た。
最初のコメントを投稿しよう!