*序章*

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―20XX年6月6日東京ドーム。 今日はアレキサンドライトの10周年記念ライブ。 時間は午後7時すぎ。 7時の開演時間を過ぎた会場内は今か今かとざわめいている。 会場に流れる音楽に合わせ踊り始める人、上着を脱いで半袖の人、メンバーの名前を呼ぶ人。 そんな人たちでドームの客席端から端、そしてアリーナから2階の天辺まで埋めつくされ、人気のすごさを改めて感じる。 (ホントにすごいなぁー…) 何度目かの場内アナウンスが始まり携帯の時計を見る。 19時30分。 (そろそろかな…) ドーム公演はいつも30分くらい開演が押す。 あたしはこの開演を待っている間の時間が苦手だ。 こんなに広い会場。 大抵の人は誰かと来ている。 一人で来ているのは珍しくもないけれど、やはり圧倒的に数は少ない。 好きで一人で来ているのだけれども、それでも若干居心地が悪いしなんだか誰かに見られている気がしてしまう。 自意識過剰と言われるかも知れないけれど、昔の癖でどうしても気にしてしまう。 そしていよいよ始まるのかと思うとドキドキして今にも胸が張り裂けそうで。 もう気分はジェットコースターの最初の一番高いところ。 今まさに落ちる寸前ってところにいる感覚だ。 心臓はもうバクバク。 早く始まってしまって…! 諸注意のアナウンスが終わり、かかっていた音楽が一層大きく流れる。 これが間もなくの開演の合図だ。 いつ始まってもおかしくない。 さっきよりも客席のざわめきが大きくなる。 電源を落とそうと携帯を開くとメールが二件来ていた。 さっき時間を見た時は一瞬開いただけだったから気付かなかった。 …ってまさか…!!! 『 FROM:ハル 件名:そういや 本文:今日どこら辺にいるの? (・ω・)?』 『 FROM:ハル 件名:? 本文:ちゃんと来てるよ…ね?』 受信したのは10分くらい前だった。 「う…ぁ…ああ…」 やっちゃった… 他の誰かに聞こえない小さい声で狼狽した。 この間もなく開演ってタイミングで気付くなんて…!!!! 今さら連絡つかないと思うしあたしはとある人にとりあえず急いでメールする。 『 宛先:佳奈さん 件名:すみません…!(>_<) 本文:アリーナA9ブロックら辺 ってあの人に伝えておいてください…m(_ _)m お手数おかけします。』 素早く打って送信する。 余り間を置かずに着信が入る。 相手は今さっきメールを送った相手佳奈さんだ。
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