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プロローグ。
不思議な雰囲気を纏う一匹のウサギを見付けた。
……彼女?
イヤ、彼、かもしれない。
そのウサギは、街中人目も気にせず、時計を気にしながら走っている。
真っ白な髪に真っ赤な瞳。華奢な身体に低めの身長。一般的に可愛いと言われる容姿だ。
ウサギである事は確かだが、人間の姿をしている。
違和感を隠しきれていない。
いつもなら「あぁ、可愛らしいなぁ…」程度で対して気にもとめない。
けれど今回は興味を惹かれた。
人の後を付け回すのは後ろめたい気分にさせられるが、相手は人間ではないから……と、言い訳をしてみる。
人の姿をしているが、ウサギだ。
全力で走っているウサギを追いかけるのは、普段から全く運動をしていないオレにとっては辛い以外のなにものでもない。
うん、とっても。
ハァハァと切れる息。
ウサギは回りを気にするでもなく、一直線に走って行く。
見る限り、ウサギは息切れしていない。
(何だ、この体力の差は……)
これは若さの違いなのか?
なんて思いつつ、オレはまだ大学生!全然若い!と、自分に言い聞かせた。
まぁ、18だし。
ウサギは……10才くらいか?
随分、可愛らしい。
酸素不足でフラフラしながらも、懸命に着いていく。
結構長い間走り続けていたら、いつの間にか、景色が変わっていた。
アレ?と思っても、もう遅い。
これ、は、ありえない……。
「ありえない」なんて事こそ「ありえない」のだが、やはり、ありえない。
だって、さっきまで居た場所はコンクリートに囲まれた都心だったのだ。
30分やそこら走ったくらいで、この状況は何であろうか。
一面に広がる森。
一面、見渡しても木、木、木。
気が狂いそうだ。
気が付けば森の中。
例のウサギは見当たらない。
……オレは何処に行けば良いのだろうか。
++
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