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チシャ猫のベル。
森の中に居座り続けても意味がないので、とりあえず歩く事にした。
立ち止まっていても、誰かが通りかかるなど予想もできないか場所なのだ。
ココが森の奥、深い場所だと容易に想像つく。
射し込む光は微量。
全体的に薄暗い。
葉は青々と茂っており、葉が重なり合っている。
体感温度は、それ程高くない。
日陰のためか。
森の熱吸収効果なのか。
歩き始めてから、30分程は歩いただろうか。
先程、ウサギを追いかけ、走っていたせいも手伝って、足がヤバイくらいにガクガクする。
これじゃぁ、産まれたてのバンビちゃんだ。
オレは仕方なく、木の根本で休む事にした。
ウサギを追って走ったし、慣れない森も歩いたし……
疲れた。だいぶ疲れた。
1時間以上も動き回っているのに、水分補給をしていない。
身体が水分を欲している。
『あ"ぁ"~。水、飲みたい…』
「それなら、この先に湖があるよ♪」
『・・・・・・ん?』
自分の呟きは誰にも聞かれる事なく、空に融けるものだと思っていたのに、返事が返ってきた。
そのため、マヌケ過ぎる声が漏れ出てしまった。
『んー…。アンタ、だぁれ?
それに、ドコに居るのぉ?』
「ボクはチシャネコのベル♪
キミの真上に待機中さ!」
上から声が降ってきた。
首だけで上を向くと、ピンクと黒と紫を基調とした服を身に纏っているネコ(ヒトの形をしている)が、枝に座っていた。
……コスプレ?
と、言ってしまいそうになる薄ピンクのネコミミにシッポ。
見た目、歳がオレと同じくらいの若い男だ。
痛いヤツにしか見えない。
けれど、ベルと名乗る男は、れっきとしたネコなのだ。仕方ない。
「で、キミの名前は何だい?」
『あぁ。オレは夜斗だよー』
「了解した!さぁ、行こうかボクのハニー、夜斗!」
『(ん?ハニー?ハチミツ?)』
チシャネコはスルスルと木の上から降りてきてた。
腕を掴むと、座っているオレを強引に立たせた。
疲れてたから座ってたのになぁ…。もう…。
++
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