生まれた忌み子

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ある日のこと、この国ジェラースの貴族、エクルンドには親縁関係の者達が一同に集まっていた。 「では、いよいよ生まれてくるのですね」 その中の一人の女性が中央に立つ男性に向かって興奮したように言った。 「ああ、もう半刻もせずに生まれるだろう」 その男性も興奮を隠せないようでその声は震えている。 「では、私達は前の間でお待ちしておりますので。お生まれになりましたら、ご連絡ください。 それでは失礼します、当主様」 そう、この男性こそ現エクルンド家当主、エリーアス=エクルンドその人なのだ。 先程の話の通り、エリーアスに今日、子供が生まれる。 男か女かは生まれてみなかれば分からないが、エリーアスにとっては初めての子供、楽しみでないはずはない。 「……そろそろ私も行くか」 親戚の者達がこの部屋から出て行ったことを確認したエリーアスは自身も部屋の外へと踏み出した。 行き先は今現在、戦っているであろう妻のもとだ。
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