僕と桜と酔っぱらい

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「っブッッ!!!!」 吹き出した。 「ッおま、アサギこれ…!」 途端、熱が頭に駆け上がる。 「モロ酒じゃねーか!!!!」 浅葱がダウンする筈である。 レンが酔っ払う筈である。 口にしたそれは、ほぼ純粋な酒に近い。酒には強いシェイルですら、油断して含んだ大量の酒に、なんだか酔いが回った気がする。 「俺、かて…こはく、の甘酒やおもてのんだんに…」 後半は言葉にならず、再び手が口を押さえる。 「シェイル―――!!!!!!!」 「ッ!!」 耳元で鼓膜を揺るがす叫び声。 目の前の死体を見下ろして、溜め息を吐いたシェイルの、無防備な聴覚を、背中のコナキジジイ(サクラ国の化け物らしい)が突き破る。 「っせぇ!耳元で叫ぶな!!」 「みみもとでさけぶな――!!!」 シェイルの怒声にも、分かっていないのかバカみたいなオウム返し。 妙に甲高い笑い声を上げるレンが、とても煩わしくて、大人しく負ぶってやっていた体を伸ばせば、レンは『あらー』とかなんとか言いながら、地面にひっくり返る。それがまた面白かったのか、芋虫のように腹を抱えて丸くなって笑いだし、シェイルは益々うんざりだと、目を細めた。 (メンドくせー) 唸っていた浅葱の口元から溢れた×××は見なかったフリをして、シェイルは酒90%(くらい)(多分)の甘酒の制作者である、琥珀の方へ、足を進めた。 彼は酒豪の真鐸の世話を焼いて、あまり飲まないのが常であるし、可愛い外見に反して、何気に酒に強い。 まともな話が出来るだろう。 あわよくば、質の悪い酔っ払い二人の面倒も押しつけてしまおうと、シェイルは期待を胸にした。  
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