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「あ~!あっはは~シェイルさんや~」
振り返った琥珀の、紅潮した顔色と舌足らずな言動に、シェイルの期待はガラガラと音をたてて崩れ落ちた。
「……何でお前…」
「え~?」
喘ぐようなシェイルの声が、聞こえているのかいないのか、琥珀は酒瓶を手放さず体をくねらせる。
「なんや~しらんけど~ウィルさんにもろてん~めっちゃ甘ておいし~♪」
彼が手に持つのは、陶器や土瓶で出来た酒瓶ではなく、綺麗な透明のガラス瓶。
見覚えのあるそれは、確かウィルの国のお酒だった筈だ。
つまり。
「……口当たりの良い酒ばっかり飲みやがったな…」
再び頭を抱えるシェイル。その間にも、琥珀はふらふらと小躍りしながら、誰もいないサクラの木に向かって話しかける。
「みかんよりももより甘いねん~♪ほんでぴゃ~しゅわ~って、あははははっ!」
最早意味が分からない。
諦めたシェイルが視線を落とせば、寝転んだ坊主頭。
明らかに、わざとらしい。
先程まで起きていたし、笑い声だって聞こえてきていた。『秘蔵酒』とやらを、守るように小脇に抱えているのも、なんだか怪しい。
「おい、メイヤ」
「………」
「メイヤ!おい、起きてんだろ!」
「………」
「おい!このクサレ坊主!!」
「………」
「!!ッテ!」
痺れを切らしたシェイルの悪態に、見切れない程の速さで、脛に蹴りを入れられる。着物の薄い布しか守るものの無かった急所に、容赦ない衝撃が走る。
(~~っ!起きてんじゃねーかよ…ッ!)
痛みを必死に堪えるシェイルは、声が出なくて、涙が浮かんだ目で訴えるが、真鐸はピクリともしない。
「めいに~ぃ!ねてんねんかぁ~?」
「寝てる」
「さよかぁ~おやすみぃ~めいに~♪」
(起きてる!!こいつ起きてるよ!!!)
酔っ払いと狸寝入りのおかしな会話に突っ込める筈もなく、必死に心の中で訴えるシェイルに、
「マタクさん、何してるんです?」
天の助けが差し伸べられた。
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