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よく、晴れた日のことだった。
開け放した縁側からは、春を告げる香りが風によって運ばれてくる。
縁側に胡座をかいて、ぼんやりと頬杖を付いて庭を眺めていたシェイルは、膝の上に落ちてきた、ハート型の花びらに目を留めた。
「……春だねぇ」
手に取り息を吹きかければ、それは軽やかに舞って、庭に落ちる。
(ねみぃ……真面目なサクラ国人も、春になると仕事の効率が落ちる、ってのは、ありゃきっとマジだな)
大きく延びをして、そのまま仰向けに寝転がれば、逆さの視界に、奥の部屋で慌ただしく動き回る、いくつかの影が映った。
不思議に思ったシェイルに、聞き慣れた声と騒がしい足音が近寄ってくる。
「シェ~イ~…」
微睡みに身を任せていたシェイルは、反応が遅れる。そのことを、シェイルは死ぬほど後悔することになる。
「…ル――っ!!ハナミしよー!!」
腹を貫いた、並々ならぬ攻撃。
飛びかかってきたレンの膝を、無防備な腹で受け止めたシェイルは、声無き悲鳴を上げて、その場に力なく倒れた。
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