僕と桜と酔っぱらい

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「琥珀に着せてもろたんか」 煙と共に吐き出された言葉に、レンは嬉しそうに頷き、遠くの二つの影を見つけた。 「お~い!ウィル~!コハク~!こっちこっち~!!」 女性にしては長身な影と、男性にしては小柄な影が、呆れ顔と苦笑を並べて歩いてくる。 「騒ぐなうるさい」 「運ぶん手伝ってぇや~!」 大きなお重とかごをさげて、近付いてきた二人は、それでも暖かな風に頬を緩めた。 ふと軽くなる、腕。 ウィルが視線を上げれば、お重が自分の手を離れ、シェイルの手にあった。自分が両手で抱えていたものを、軽々と片手で持たれてしまう。なんだかそれに釈然としないウィルは、お礼代わりにシェイルの脚を蹴飛ばした。 「ッテ!何だよ」 「別に」 『理不尽だ』とばかりに目尻を上げるシェイルに、ウィルはつんと余所を向いて、持つ物の無くなった腕を組む。 そんな二人のやりとりを余所に、琥珀は荷物を敷物の上に下ろして、一息吐く。 その遙か後ろから、酒瓶を片手にゆったりと歩いてきた真鐸も合流し、やっと花見の支度が整った。 「何ソレ」 「『唯我独尊』、俺の秘蔵酒だ」 「アサギ、アンタは何にする?」 「あー…俺酒いらへんわ 琥珀、茶ァあるか?」 「下の籠んなか~!あ、白い徳利が甘酒やで~!」 「おおきに」 「これだな ウィル、お前何飲むんだ?」 「『高嶺の花』」 「え~!?オレ何にしよっかなー!」 「暝兄お猪口いらへんの?」 「いらね」 「ちょ、こらレン!小皿に採れ!」 「うまーい!これ超ウマーイ!!」 「聞けよ」 乾杯もなしに始まった、『花見』という名の『宴会』は、酒と弁当を恐るべき速さで消化しながら、賑やかに進んでいった。  
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