3人が本棚に入れています
本棚に追加
「琥珀に着せてもろたんか」
煙と共に吐き出された言葉に、レンは嬉しそうに頷き、遠くの二つの影を見つけた。
「お~い!ウィル~!コハク~!こっちこっち~!!」
女性にしては長身な影と、男性にしては小柄な影が、呆れ顔と苦笑を並べて歩いてくる。
「騒ぐなうるさい」
「運ぶん手伝ってぇや~!」
大きなお重とかごをさげて、近付いてきた二人は、それでも暖かな風に頬を緩めた。
ふと軽くなる、腕。
ウィルが視線を上げれば、お重が自分の手を離れ、シェイルの手にあった。自分が両手で抱えていたものを、軽々と片手で持たれてしまう。なんだかそれに釈然としないウィルは、お礼代わりにシェイルの脚を蹴飛ばした。
「ッテ!何だよ」
「別に」
『理不尽だ』とばかりに目尻を上げるシェイルに、ウィルはつんと余所を向いて、持つ物の無くなった腕を組む。
そんな二人のやりとりを余所に、琥珀は荷物を敷物の上に下ろして、一息吐く。
その遙か後ろから、酒瓶を片手にゆったりと歩いてきた真鐸も合流し、やっと花見の支度が整った。
「何ソレ」
「『唯我独尊』、俺の秘蔵酒だ」
「アサギ、アンタは何にする?」
「あー…俺酒いらへんわ 琥珀、茶ァあるか?」
「下の籠んなか~!あ、白い徳利が甘酒やで~!」
「おおきに」
「これだな ウィル、お前何飲むんだ?」
「『高嶺の花』」
「え~!?オレ何にしよっかなー!」
「暝兄お猪口いらへんの?」
「いらね」
「ちょ、こらレン!小皿に採れ!」
「うまーい!これ超ウマーイ!!」
「聞けよ」
乾杯もなしに始まった、『花見』という名の『宴会』は、酒と弁当を恐るべき速さで消化しながら、賑やかに進んでいった。
最初のコメントを投稿しよう!