…三…

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ローゼンブルク城は、それ程大きい城ではない。 しかし、特徴的な構造をした城である。 周囲を囲む城壁の内部は城本体を中心に、いくつかの区画に分けられている。 それぞれが独立した防御拠点の性格を有している上に、区画間を繋ぐ通路が実に複雑で、所々に設置された隔壁の効果と相まって、攻め手にとっては難攻不落の城である。 問題は守備側にとっても、ほぼ等しい効果を発揮してしまう点だ。 つまりは、この城には守備側の為の隠し通路の類いがない。 迎撃に戦力を集中をさせたくとも、そのための移動が困難なのだ。 直線なら一分かからない距離の移動に、倍以上の時間を必要とする有様であった。 「急げぇ!」 先頭を行くビーグルから、ユリウスの叱咤がとぶ! 四台のビーグルが一直線に並んだ状態で進んで行く。 両小隊の腕自慢が操るビーグルは暗闇の中、起伏あり急カーブありのこの細い道をヘッドライトのみを頼りに巧みに駆け抜けていく。 激しく車体を揺らし、時に大きく跳ね上がる。 さながらラリーのワンシーンの様だ。 「振り落とされるなよ? 拾ってやる暇はないからな!」 最後尾のビーグルからマルコの声が飛ぶ。 ヘッドライトの先に閉ざされた扉が現れた。 分厚い木材に所々に金属の補強が入った扉が、急速に近付いてくる。 「そのまま真っすぐだ!スピードを落とすなよ!!」 ユリウスの叫びに重機関銃の連射音が重なる。 扉に銃火が踊り、砕けた破片が闇に舞う。 次の瞬間、ビーグルが勢いそのままに扉を突き破る。 後続の三台も、それに続く。 左手に城壁を見て直進。 壁が途切れるとそこが目的地だ。 気が付けば銃撃音は消えていた。 左側の視界が開けたのを確認した瞬間、ほとんど同時に四台のビーグルがなだれ込む。 大きく流れるヘッドライトの光の中、一瞬人影が浮かぶ。 絶妙のタイミングと間隔で四台は人影に対して横向きに停車。 車体最後部に取り付けられた小型サーチライトが向けられる 強烈な光の中に浮かび上がったのは、意外にも自分達と同じ制服を着た、大柄な人物だ。 それもたった一人。 マルコもユリウスも、その人物を知っていた。 いや、ここに居る全ての者が知っていた。 第四小隊にいたクロアチア人の男だ。 虚脱状態なのか、俯いたままで、両腕はダラリと下がったまま。 右手の指先にサブマシンガンがかろうじて引っ掛かっているだけだ。
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