…三…

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「他の者はどうした?!」 あまりの異様さに誰もが息を呑む中、マルコが男に問い掛ける。 万一に備え、重機関銃の銃手以外はビーグルを盾に射撃体勢のまま、周囲を警戒。 侵入者とおぼしき人物は何処にも見当たらない。 排除したのか? 逃げられたのか? 今、状況を説明しうる者は、奴しかいない。 いつまでも呆けさせておく訳にはいかなかった。 「おい!聞こえてるか?」 苛立ちを隠せないまま、マルコがクロアチア人に近付こうとビーグルの影から出ようとした。 「ドォーチェ!奴の足元っ!?」 小隊の誰かが叫んだ。 マルコは、最初その言葉が何を意味しているか解らなかった。 言われるまま、視線を落とした瞬間。 戦慄が走った。 奴の爪先が、、真下を向いていた。 そして、わずかに浮いていた。 「!!」 クロアチア人の巨体が、糸の切れた操り人形の如く崩れ落ちた。 だが、その様子を追う視線は無かった。 その後ろに、立っている者がいた。 右腕を頭よりわずかに高い位置に伸ばした細身の立ち姿。 白と黒を基調とした衣装と、先が二つに割れたトンガリ帽子はピエロ、、いやトランプのジョーカーを思わせた。 男か女か? それすら容易に判断出来ない雰囲気だ。 わずかに伏せたその顔を伺う事は出来ない。 決して大柄ではない。 ガチガチのマッチョでもない。 あの巨体を腕一本で支える程の膂力の持ち主とは到底思えなかった。 異常な静寂が、場を支配した。 侵入者はおもむろに、右腕を胸元におき、芝居じみた仕種で深々と一礼。 一呼吸おいて、顔を上げる。 「!」 その場にいた、すべての者が息を呑んだ。 現れたのは白滋の面。 片方の目元には星 片方の目元には涙 それぞれが描かれたそれは『ピエロ』を連想させた。 『ピエロ』が右腕をまっすぐ前に伸ばす。 右の手の平を上に向け、四本の指だけを、軽く握る様に二度動かした。 『どうした?かかってこい!』 それは無言の、しかし明らかな『挑発』だった。 場を支配していた呪縛が解けた。 怒りが一気に沸点に達した! 「ナメるなぁ!!」 そして激しい銃撃が始まった。
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