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それも複数だ。
目の前、数メートル先。
銃口同軌のマグライトを向ける。
光の円の中。
先行していた三人の部下が静かに崩れ落ちた。
その中心。
人影が立ち上がった。
それは後ろ姿。
先が二つに割れたとんがり帽子。
白と黒の縞模様の服はトランプのジョーカーを思わせた。
その手には蒼白い光の刃を湛えた長大な鎌。
それは『死神』そのものだった。
「撃てっ!撃てぇ!!」
絶叫と共に集まり始めた銃火の中、目標はゆっくりと振り向いた、、と思った瞬間、その姿が掻き消えた。
目標を見失った銃火とマグライトの光が無秩序に闇を裂く。
場を狂乱が支配した。
「落ち着け!同士討ちになるぞ!!」
叫ぶアバッキオの周囲で蒼白い光の尾を引いて闇が疾る。
その都度、銃火はその数を減らしていく!
「くそっ!くそっ!!」
蒼光を銃撃が追いかけるが、その速さは場数を踏んでいるアバッキオをして捉らえきれない。
気がつくと壁際。
銃撃を加えている者は、他にいない。
時間にして僅か一、二分。
その間に完全武装の15人が制圧された。
それはアバッキオならずとも衝撃的な事実だった。
「どこだ!どこにいる!」
一瞬、目を離した隙に見失った衝撃。
向けられた殺気に思わず身を反らす。
何かが顔の横を掠めて壁に刺さる!
視線を向ける。
壁に突き刺さっていたのは、一枚のトランプ。
図柄は、、
『ジョーカー』
振り向き様に構えた先。
マグライトに照らし出されたのは、急速に近付いてくる人影。
その顔は白磁のピエロの面。
次の瞬間、アバッキオの視界を蒼光が覆い尽くした。
それが、ジョルジオ・アバッキオが最期に見た光景だった。
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