…二…

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「何と言う醜態だ!」 ロベルト・カッシーニは苛立ちを隠しきれずにいた。 ローゼン・ブルク城の地下に設置された指揮・管制室の中央。 一段高くなった場所に置かれた専用のシステムチェアが、これ程坐り心地が悪いと感じた事はなかった。 手元のモニターに次々と表示される情報は、どれもが信じ難い物ばかりであった。 ロベルトは不快な発汗を感じて、ネクタイを緩めた。 …………… 城の正門前に、一台の小型乗用車が停車したのは、今から二十分程前。 午後十時丁度だった。 こんな時間、地元の者ならまず来る事はないが、たまに物好きな観光客がライトアップされた城を間近で見ようとやって来る。 そんな手合いには、外部スピーカーで警告を与えお引き取り願うのが、いつものパターンだ。 折よく、ナンバープレート照会の結果がでた。 地元のレンタカー会社が観光客に貸し出した物である事を示していた。 当然過ぎる結果。 もしその気があるなら、もっとゴツイ車に爆発物を満載して門に激突させる筈だ。 仮にそうしても、扉が一つ大破する程度だ。 車のドアが開いた。 運転席側だ。 ゆっくりと人が降りる気配。 やはり観光客だ 監視員が、そう判断し外部スピーカーの切替の為に、一瞬モニターから目を離した。 爆発音!そして僅かに遅れて、ズシリと腹に響く振動。 慌ててモニターに目をやる。 爆発の影響か、えらく荒れた画像の中で、問題の人物が、携帯ロケット砲とおぼしき物を無造作捨て去る様子が写し出されていた。 かくして、夜のローゼン・ベルク城に警報が鳴り響く事になった。 …………… 指揮管制室は、先程から外とは違う意味で戦場と化していた。 膨大な量の通信やデータが、さながら津波の如く押し寄せていた。 報告、確認、問い合わせ。 引っ切りなしで流れ込んでくる中には、重複あり、誤認あり、未確認ありで、その収拾選択だけでも大仕事だ。 他の情報と比較し、信頼度を判定して、より高い信頼度の情報を組み合わせて、状況を推測。 関係各所にフィードバックしていく。 瞬時に的確な判断が要求される。 それは、何より経験値が物を言う。 その点、この部屋にいる六人は優秀だった。 よくその職責を果たしている。 情報は見事に整理され、適切な形で、必要な部署に伝達されていく。 給料に見合った働きぶりといえた。
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