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遠くに銃撃音が聞こえる。
管制室から時折もたらされる情報は、オペレーターの情報選別を通っているのだろが、やはり混乱は隠せない。
こちらが求める情報はなかなか入ってこない事が現実だ。
必要な情報は可能な限り自分で集める。
マルコは耳を澄ます。
戦場で音は重要な情報源だ。
電気駆動のビーグルの走行音は極めて静かで、こんな状況ではありがたい。
銃撃音は一種類のみ。
特徴的な連射音は味方の物に間違いない。
音の反響の感じから、どうやら植物園の近くと思われた。
『最新情報』より、位置がズレているが、まぁ誤差の範囲だ。
「ドゥーチェ!どうやら味方が圧倒しているようですな!」
底抜けに明るい声の主の方に視線を向ける。
左側を並走しているビーグルの後部に設置された重機関銃に身を預ける様にしている男だ。
第三小隊の隊長ユリウス・ホーナー。
一見、優男風の容貌だが当然ながら腕は立つ。
つい先程、移動中に偶然にも合流する事が出来た味方だ。
その際、マルコが徒歩移動だった第三小隊にビーグル二台を提供を申し出た事により、両小隊は揃って目的地を目指す事となったのである。
「どうやら、、そうでもないらしい」
更に話し掛けようとするユリウスに、マルコは軽く片手を上げて制した。
「銃声が、、減っている」
マルコの言葉に、ユリウスが慌てて耳を澄ます。
それは戦場で場数を踏んだ者にしかわからない程の小さな変化だった。
だが、確かにそれはあった。
「ドゥーチェ!」
ユリウスの呼びかけに、マルコは大きく一度頷いて応じたた。
銃撃の激しさから、敵が健在な事は間違いない。
それでいて、銃撃音が減る。
理由は一つしか考えられなかった。
「速度上げろ!急げ!!」
マルコの号令の下、四台のビーグルは速度を上げた。
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