雨と携帯

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雨と携帯

部屋の隅で鳴らない携帯が 失ったものの大きさを語ってる あの日最後に5秒だけの着信 今も止まっている時間の始まり   窓の外に降りしきる雨 薄暗い空 独りきりの部屋 2度と鳴らない電話をただ見つめる いつまでも そう いつまでも    手を伸ばせばすぐ届くのに  何歩かの勇気が持てない  声が聞きたい…話したい  雨はまた少し強くなった     あの日あなたとお揃いで買った 飾り気のない小さなストラップ まだ外せずに部屋の隅で揺れてる あの日から変わる事なく    手を伸ばせばすぐ届くのに  決して届かない指先  話がしたい…でも怖い  雨の音が耳に痛い       愛を求めるから   また愛に迷って   それでも独りじゃ   泣きそうになるから   あなたを求めてるの   探しているの   この声が枯れるまで   あなたを呼び続けている      手を伸ばせばすぐ届くのに  伸びない腕がもどかしい  お願い ねぇ 鳴らしてよ  この雨の音をかき消して    手を伸ばせばすぐ届くのに  見つめる事しか出来ない  ふと窓の外を見てみたら  雨は少し弱くなった
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