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故郷の村で毎日を穏やかに過ごしていたユリウスは、来年で成人を迎える今年、故郷を離れ皇帝を倒す為の旅に出た。
"せっかくユリウスという偉大な剣士の名を授けたのだから、普通の人とは違う人生を歩みなさい"
ユリウスが十七の時、唯一の肉親であった母親はその言葉を遺して逝ってしまった。
その言葉には心から賛同するものの、さして日常を変える手立ても見当たらず、辺境の村では歴史に残るような出来事も起こらないのである。
村には同年代の友人はおろか、恋愛の対象になるような女性さえたった一人しかおらず、生涯独身になってしまうかもしれないが村での生活は嫌いではなかった為、それでもいいんじゃないかと諦めていた。
そんな折、舞い込んで来たのはかつて世界を震撼させていた皇帝の復活の話。
辺境の村にはまったくその影響は無く、皇帝が世界を席巻していた時代を生きる村の長も『あぁ、そうなのか』と、まるで皇帝がいたことすら知らなかったかのような平和ぶりである。
ユリウスにとっても、村に影響が無い話ならばまったくもって蚊帳の外の出来事なので、村長の話を興味深く聞きながらも心の何処かでは『まぁ、そうだよな』と傍観者の立場であった。
ともあれ、皇帝復活の話を知ったのはユリウスが十四の時の話なので、その時点では特に何かしてやろうとは思わなかったのも或いは当然かもしれなかったが、母親が死んでからというものの、時折ユリウスは母の遺言が頭を掠めるようになった。
しかし、母親が死んだ時はそれなりに悲しかったが、それとこれとは話が別で、遺言だからと使命感に燃えるほど母親想いだったわけでもない。
それでもこうしてユリウスが打倒皇帝の旗を掲げて旅を始めた理由は、まったくもって別のところにあった。
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