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「こんにちは! こんにちは! 誰か! ・・・遭難者です!」
小屋の奥から数人が駆けだしてきた。
「どうした!?」
「遭難者・・です。 この子、足を怪我してて・・・T尾根で・・・ここまで・・・連れて来たんだけど・・・気を失っちゃったみたいで・・・身体も冷えて・・・お願いします」
細かいことはともかく、なんとか状況を伝えたら、もう息が切れて、彼女を抱き抱えたまま、ぼくは小屋のスタッフの腕の中に倒れこんでしまった。
「わかった」
そう言って彼女を抱きあげたスタッフが、その場に立ち竦んだまま呆然としている。
なぜ? なぜ、早く奥に連れて行かないんだ?
「あの・・・」
スタッフがぼくを蒼い顔で見つめた。
「この子・・・でも、君・・・この子はもう・・・」
え?
何だって?
もう、何?
そんな馬鹿な・・・。
だって・・・。
いつの間にか、ぼくは、気を失ってしまった。
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