雪山にて

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 金色に染まっていた雪原は、陽が高くなるに従って白銀に変わっていく。風もなく晴れ渡った空。眩しいくらいに明るいのに、足跡一つ無く人気のない銀の原は、まるで月夜の草原を思わせる静かさだ。  小休止の後、先に進むことにした。おだやかな天候とはいえ、冬山の休憩は注意を要する。歩いているうちに汗ばんでくるくらいに暑くなってくるが、気温は氷点下だ。暑さをしのごうと防寒着を脱いで休憩し、疲労から眠気がおそってきてうたた寝でもしようものなら、待っているのは凍死である。長すぎる休憩は危険なのだ。  小屋まで最後のピークに向かう。ここはガレ場で、普段は足もとが危なっかしいのだが、雪のおかげで、今日は歩きやすい。ピークを越えたところで、登山道の脇に突然、赤いかたまりが目に入り、ドキリとした。
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