雪山にて

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 人だ。  誰もいないと思っていたのだが。  淡い赤の防寒着に身を包み、赤いザックを抱えてうずくまっている。 「どうしました?」  思わず声をかけた。  赤い帽子が顔を上げる。  女の子だ。  年の頃はぼくと同じくらいかな。高校生くらいに見える。それに、けっこう可愛らしい。 「こんにちは。どうかしました? 休憩ですか?」  女の子は僕をしばらく見つめて、安堵したようににっこりと笑った。目がとても愛くるしくて、少しどぎまぎした。 「こんにちは。足を・・・」  彼女はどうやら片方の足をくじいてしまったらしい。動けないまま、誰かが通りかかるのを待っていたのだという。 「それにしても、こんなところで休んでいたら危ないよ。ぼくが通りかかったからいいようなものの・・・そこのカーブを過ぎたところに小屋があるから、とにかくそこまで行こう」 「え? そんな近くに小屋があったの?」  彼女は、山小屋のすぐ近くまで来ていたことにも気づかなかったようだ。  手を貸して、立たせてみようとしたが、ひどく痛んで立てないようだ。足はくじいたくらいではなくて、骨折しているのかもしれない。とにかく、このままではまずい。 「ちょっと待ってて」  ぼくは、彼女と、自分のザックをそこに残して、山小屋まで走った。小屋で、応急処置のできるものや暖かい飲み物を借りてきて、できれば小屋の主に足を見てもらって、彼女を下山させる段取りを頼もうと思ったのだ。
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