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しかし、小屋は空だった。この大雪で、小屋の主は何かの準備でいったん降りて、今朝はまだ着いていないらしい。仕方なく、小屋を開けて使えそうなものを持ち出す。包帯、テープ、念のために毛布、そして取りあえず少しお湯を沸かして小さなポットに入れる。山小屋は、こういった緊急時に誰でも使えるように、施錠することはない。
女の子のところに戻り、そっと靴を脱がせてみた。ひどく痛いのだろう、彼女は顔をしかめた。かなり腫れている。これじゃ歩けない。とにかくこの子を下ろさなきゃまずい。ぼくは、彼女の足に包帯とテープを巻きながら言った。
「とにかく下りなきゃ。荷物は大事なものだけにして。・・・君を・・・背負ってくから」
ちょっと気恥ずかしかったけれど、そうも言ってられないので、思い切って彼女を背負ってこのまま下山することにしたのだ。彼女も少し躊躇したけれど、こくりとうなずいた。彼女の身体をそっと抱えて、まず片足で立ってもらってから背負う。彼女は少し遠慮がちに、手をぼくの首にまわした。思ったよりも軽かった。そして、彼女の身体はとても柔らかいように感じた。女の子ってこんなに柔らかいんだ。ちょっとドキドキした。
大事なものだけにしてもらった彼女の赤いザックは胸に担ぐ形にした。自分のザックと彼女の靴やなんかはそこに残して、とにかく急いで下山する。
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