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ラッセルして登ってきた道を、こんどは下山する。三、四〇キロの荷物を背負って登り下りすることは珍しくないから大丈夫だと思っていたのだが、やはり人を背負っているというのは勝手が違う。急ぎながらも、彼女の足が痛まないように気をつけて足を運ぶ。背中で揺られているうちに彼女が眠ってしまうかも知れない。そうならないように話しかけながら歩く。
彼女はぼくと同じA市の高校に通っているのだという。同じ街。彼女の高校はぼくの高校からそんなに遠くじゃない。怪我が治ったら、また会えるかな。誘ったら一緒に登ってくれるだろうか。そんなことを考えながら歩いた。なんだかうきうきした気分になる。
背中の彼女がなんだか少し重たくなったような気がした。おしゃべりの受け応えも滞りがちになる。背中の彼女が小刻みに身体を震わせているのが伝わってきた。体温が落ちてきているのかも知れない。思ったよりも足の状態が悪いのだろうか。身体を温めてあげなけりゃ。
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