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「少し休もうか?」
彼女が黙ってうなずいた。
平らな場所を見つけて彼女を降ろす。
山小屋で沸かしてポットに入れてきたお湯で手早くココアを溶き、カップに注いだ。
「ココアだよ。まだ熱いと思うから、ゆっくり飲んで身体を温めて・・・」
それでも彼女は震えている。体温が下がっているんだ。ぼくは彼女を背負って歩いて来たから汗ばんでいるくらいだ。こういうときは、ぼくの体温で彼女を温めてあげるのが一番いいんだけど・・・。
「温めてあげたいんだけど・・・いい?」
彼女はこくりとうなずいて、防寒着のボタンをはずした。さすがに素肌というわけにはいかないけれど、ぼくもダウンジャケットの前を開いて、彼女の開いた防寒着の前から手を差し入れてセーター越しにそっと抱きしめた。
しばらくそうしていると、彼女の身体も温まってきたようだ。白い頬に赤みが差してきた。
「ありがとう。もう行けるから」
そう言って微笑んだ彼女をまた抱きかかえ、背負って再び道を下り始める。
「また・・・会える?」
思い切って聞いてみた。
彼女がぼくの胸にまわした手をぎゅっと握った。ちょっと抱きしめられた感じ。
また、会えるんだ。
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