0人が本棚に入れています
本棚に追加
この道を下りて向こうの雑木林に出れば、麓の小屋まではもう一息だ。麓の小屋には山岳救助のできるスタッフもいるはずだ。ぼくも、かなりバテているけど、彼女とまた会えるんだと思ったら元気が出てきた。あと少し・・・。
あと少し、そう思った途端に、彼女の身体が急に重たくなった。
話しかけてみる。
答えがない。
ぼくの頬を、肩からのぞいている彼女の頬にそっとあててみた。
冷たい。
ぼくの胸に回された彼女の手にも、なんだか力がない。
ぼくは焦った。
焦ってなかば駆け下りた。
雪道で助かった。雪がこれだけ積っていなければ、でこぼこした林間の道をこんなふうに駆け下りることは難しい。
雪をかぶった林の木々の間から、少し、赤い屋根が見えた。
小屋だ。もうすぐだ。
息を切らして小屋に駆け込む。
最初のコメントを投稿しよう!