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時折、夜中に気づくことがある。
安眠していないことなど、解っていた。気にする必要もなかった。ただ、偶然目についただけだ。
静かに寝息を立てていたと思ったら、一瞬呼吸が止まる。そのまま微かに震え出し、あからさまに呼吸が乱れる。寝言は無い。代わりに唇を噛み締める。
文字通り跳ね起きて、深く息を吐いて。俺が寝ていると見ると、何に安堵したのだろう、もう一度息を吐いて。
寝床は狭くなるし、一時的だろうが人は増えるしで迷惑してるというのに、コイツをベッドから追い出せない。別に気にしている訳じゃない。断じて。
ただ。
普段は大して代わり映えのしないコイツの、感情の混じった顔を見るのが暇潰し程度に面白いだけで。時折見せる翳った表情に、妙に苛々して。
うっかり手を離したなら、そのまま地面に落ちて割れてしまうような危うさ。叩き割りたい。
なのに。
出来ない。
また横になる音。目を開けて確認すれば、背中を向けている。
細いかと思えば意外に力がある。それでも薄い、背中。細かい傷を見た。目立つことは無いが、色が白いせいで、隠すことは出来ないだろう。
聞いたことは無い。興味が無い。
震える肩。
直ぐに解る。
泣き虫が。
苛々する。
毛布を引き寄せて、枕に頭を擦り付けて。それでも震える肩は、隠せない。
声は洩れない。
痛いほどの、静寂。
不意に上体を起こす。驚いたのだろう、振動が伝わってきた。何も言わない。何も聞こえない。
この角度から、顔は見えない。代わりに、布団を掛けてやる。自分の行動が、イマイチ意味不明だが、いいだろう。
苛々は治まる。
そのまま、また横になる。一瞥、震えは無くなっていた。
早々に、寝てしまおう。
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