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「ナァナちゃん、何食べてるのぉ?」
「ん?飴玉だよォ」
【飴の味は、】
最近煙草が増えたって、壱君の言葉。壱君も代わり映えしないじゃない。
なのに心配性なのか、世話焼きなのか、壱君に一袋の苺飴を押し付けられ、尚且つ青の美しい愛用の煙草箱を取り上げられた。
だったら壱君も禁煙しなよ。珍しく赤L/AR/Kなんて吸ってる壱君に言ってみたら、濃厚な香り、微かに掠れた声で平然と言われた。
「次の機会な」
………ずるい。
ずるいけど、それが壱君の優しさだって知っているから、文句も言えない。今度、こき遣ってやろう。
飴玉を放れば、独特の甘味が口に広がる。きっと、あのクールな顔で堂々と買ってきたのだろう。ある意味愛想が無いのも凄い。
「あ、そういえば香尋チャンが呼んでたよ」
あ、変化。一瞬目を丸くして、微かに微笑む。苦笑みたいだけど、目が優しいんだ。
「…どうせ酒だろ」
こんな表情をするなら、悪くないよね。直ぐに立ち上がって、お酒の準備。なんて可愛いんだろう。このままでいてくれれば良いのにな。
それにしても、飴玉が減らない。コロコロと咥内で転がす度に丸い感触が舌を擽る。
「ナァナちゃん、何食べてるのぉ?」
「ん?飴玉だよォ」
「飴ぇ?」
そこで麻耶チャンの気配。ふわふわと浮いているような声が耳に心地良い。興味を示したのか、近付いて来て横に座る。
「まやも食べたぁい」
子供がせがむかのよう。可愛いなぁ…、思わず思ってはその顔を見つめる。たくさんあるよ、そう返さなかったのはちょっとした悪戯心か。
「いいよ、」
唇に口づけ、黙って受け入れてくれるようだ。耳の後ろに掌差し入れて、後頭を引き寄せる。舌先を使って飴玉を移動させるなり絡む互いの舌に、微かな甘さ。吐息吐き出すように唇を離して、視線をくべて。
笑った。
穏やかな空気に麻耶チャンの笑顔。美味しいね、なんて。
君に救われてる俺がいるんだよ。
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