序章

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-1954年6月30日- ロサンゼルス郊外。 わたしの名はハリー・パウエル。 カリフォルニア州で弁護士をしていて、今さっきロサンゼルスにあるアパートに出張から帰った。 …のだが… ずっと隣室で流れているオペラが針飛びしていて、とても疲れた体を休められずにいた。 曲は…La traviata、かな? 主人公のヴィアレッタが神に"死にたくない"と哀願しているシーンだけが繰り返し繰り返し、私が帰宅してからもう一時間近く鳴り止まずにいた。 隣人はヴィヴィアン・プロムナイトといって、知的そうでとても綺麗な女性である。 私にも男の性あって、綺麗な女性に たかが針飛び因縁を付けられた などとは思われたくなくて我慢していた。 しかし"死にたくない"ばかり一時間も連呼されると流石に気味が悪くなって苛立ちを覚え、隣室に苦情を言いに行くことにした。 ドアの前に立つ。 まだ、"死にたくない"が聞こえていた――… .
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