にくまん

2/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
夜のコンビニ、レジ前。 『おでん下さい』 と言おうとして、その横。 俺は、にくまんのケースを見てしまった。 別に、カレーまんや、あんまんや、五目まんに興味はなかった。 ただ、にくまんと… 付いてくる酢醤油。 それが、おでんを買おうとしていた俺を誘惑していた。 レジで、俺の言葉を待つ女子バイト店員は高校生のようだ。 その視線が『どうすんの?』って聞いている。 髪の色が、渋皮入りモンブランみたいな子だ。 (モンブランか) おでん、にくまん、酢醤油、モンブラン。 人生においては、どうでもいいものばかりだ。 「おでんと、にくまん下さい」 気付けば、おでんとにくまん(酢醤油)を俺は買っていた。 (もちろん、モンブランは買わなかった) 完全なる大人買い。 きっと、食いすぎて気持ち悪くなるだろう。 (だって俺、ほかにも買っちゃってるし。牛丼とか) きっと高校生の俺なら、どっちかしか買わなかった。 それがどうだ。 大人になり、働き出すと食えない量の衝動買いだ。 (贅沢だ…そしてバカだ…) (しょうがない。おでんは、明日の朝にしよう) 「朝から、おでんか。キツイな…」 でも、胃袋が『今日、食べるよりましです』と言っている。 おでんと、にくまん。 「にくまん優先か…」 俺は心で、おでんに謝っていた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!