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部屋着に着替えて飯を食おうとする僕に、母さんは笑顔を浮かべながら話かけた。
「今日、髪を染めたのも御先祖様が教えてくれたの。これで何か、家庭に良い事が起これば良いな」
母さんは極度の宗教家の為に、何事にも御先祖様や功徳に結び付ける。日蓮の宗派らしいが詳しくは知らない。その話を聞いている僕は余り良い気持ちはしなかった。
しかし実際、宗教と言う物は心の支えになる。僕自身も一時期、助けられた事も事実だ。
宮沢賢治も熱心な日蓮信者だったらしい。人間は身体が弱いとどうしても宗教に頼りたくなる様だ。
母さんの場合も腰が弱いが為に始めたのだろう。が、母さんはそれに頼り過ぎていた。
「拝むのも良いけれども、実際に色々な努力をしなければ結果は付いて来ないものだろう?」
目を合わせずに飯を食いながら言う僕の言葉に母さんは黙り込む。これはほぼ毎日行われる会話だった。
「母さんの考えは仏教よりもキリスト教に近い。神がなんとかしてくれる的な。例え神がなんとかしてくれるとしても自分の力にはならないじゃあないか?」
僕の口調が強くなって来ると母さんは別の会話へと話をそらす。
そこでやっと落ち着く事が出来る。
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