第一章

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「OK、あんな生あったかい教室で勉強なんてとてもじゃないが出来ないし。俺は賛成だよ。」 「そうかさすがだぜ裕也。で、お前はどうするんだ?宮月。」 蔵元が呼びかけたのは、本棚を背もたれにしていたこの部屋の主の宮月だった。 彼は、先ほどまで読んでいた本をそっと本棚に戻して 「行き場所が決まったら教えてくれ。」 そう言ってまた別の本を取り出し、自分は関係ないといわんばかりに本の世界に飛び込んでしまった。 容姿端麗で金持ちの息子である宮月はつかみ所が無い気難しい奴だった。学校ではこんな奴じゃないんだが・・・・・・ 一度家に帰ればこの調子だ。性格が蔵元とは正反対なのに何でこいつ等は仲がいいんだろう? そう思うのは俺だけじゃないはずだ。多分な。 「行き場所ね。どうする裕也?」 そんな風に俺に振らないでくれ。俺は他人から反感食らうのが一番いやなんだからさ。 「まぁゲーセンとかで良いんじゃないか?」 なんて考えながらもちゃんと答える俺っていい奴だろ。というよりゲーセンしかないんだよ。 他人の反感を買わない場所ってさ。あそこなら色々な物があるから満足しなくても不満なんて感じる奴 はそうそう居ないはずだ。と思ったんだが、どうやら宮月は気に入らなかったらしい。少ない動作で一瞬、俺のほうを睨んだ宮月の眼を俺は見落とさなかった。 いやならいやとそう言ってくれればいいのに。なんて不満を外に漏らすほど俺の精神は強くない。恐る恐る宮月のほうを見てみたが、俺は睨んでなんていないぜ。 と言わんばかりに本に没頭していた。 「よし!ゲーセンに行こう。そうと決まったら直ぐに準備だ!!」 さっきまで、宮月のベットの上で胡坐をかいていた蔵元が太股を叩いて立ち上がった。そして、慣れた手つきで髪をセットする為に鏡の前に座る。 他人の家でも自分の家にでもいるように行動できる蔵元を俺は憧れのように見ていた。まぁ、勉強の出来ない脳は要らないが・・・・・・
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