第一章

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「そんな事言われてもな~大体この間連れて行ったときは、お前上機嫌だったジャン。ミヤ、もしかして俺に言わずに打ちに行って負けでもしたの?」 「関係ないだろう。とにかくあんな物は不要だ。即刻禁止にでもするべきだ。」 「それができないからパチンコ屋は増えていくんだろ?金持ちなんだから一回負けたくらいだでグダグダ言うなよ。次は勝てるかも知れないぜ。なぁ裕也?」 会話を楽しんでいたいだけの俺にも話がふられた。 「ん、まぁ勝てるかどうかって、二分の一だもんな。」 「え、いや待てよ。それおかしくないか?胴元の儲けも入れてだな、こういった物はイーブンなんて事は・・・・・・」 「いや、だって勝つか負けるかだろ?」 秀才と呼ばれる宮月もこう言った極論は苦手のようで、極論を返すとすぐに黙り込む。ヘルメットからは「お前らしいな」という二人の笑い声が聞こえてきて、その声に釣られるように俺の声も混じっていった。 不真面目で、素行が悪い落ちこぼれ・・・・・・学校しか知らない校内の同級生は蔵元を評価する時にこう言うが、学校外を知っている俺と宮月は不真面目で自己中心的な達観者、と評価している。役者と観客だと若干評価が違う物だ。常に傍観者で居る事も重要かもしれないが、どうせなら常に演じる方で居たい。 俺の考えを変えたのはこの二人だった。でも、俺は自分が傍観者である事を理解していた。人はそう簡単に変われないものだ。 「ところでさ、この町外れにある廃ビルに幽霊が出るってお前ら知ってた?」 運転手はそういって静かに話題を変えた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加